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お客さまの預かり物を紛失してしまった場合、ホテルやお店側の責任はどうなる?

2024年03月19日
  • 一般企業法務
  • 預かり物
  • 紛失
お客さまの預かり物を紛失してしまった場合、ホテルやお店側の責任はどうなる?

2021年度に山形市が行っている法律相談を利用した方は121名でした。法律相談でよくあるケースのひとつに、故意や過失により契約上の約束を果たさない「債務不履行」に関するものがあります。

たとえば、ホテルや店舗が宿泊客・利用客からの預かり物を紛失した場合、顧客に対して債務不履行責任などを負います。また、預かっていない物についても、ホテル・店舗内における紛失について事業者側の注意義務違反が認められる場合は、顧客に対して債務不履行責任を負う可能性があります。

本記事では、顧客からの預かり物を紛失したホテル・店舗が負う法的責任について、ベリーベスト法律事務所 山形オフィスの弁護士が解説します。

出典:「年報ファーラ・令和3年度」(山形市)

1、ホテル・店舗が顧客からの預かり物を紛失する事例

ホテルや店舗が顧客から預かった物を紛失するパターンには、主に以下の3つがあります。



  1. (1)ホテル・店舗側の管理ミス|どこかに置き忘れてしまったなど

    顧客から預かった物を所定の場所にしまう前に、従業員がどこかへ置き忘れてしまうケースがあります。

    このような管理上の人為的ミスは、マニュアルの整備や研修などを通じて従業員の危機管理意識を高め、最大限の予防に努めましょう。

  2. (2)他の顧客による盗難

    顧客の物を、別の顧客が盗難するケースもあります。

    たとえば、顧客がクロークに預けた荷物を、別の顧客が預けた顧客に成りすまして引き取ってしまうケースが典型例です。

    特にナンバータグだけで預かり物を管理している場合、ナンバータグが盗まれて不正に利用されると、ホテルや店舗側も気づくことが難しいでしょう。本人確認や部屋番号の確認と併用するなど、成りすましを見抜けるような工夫が求められます。

    また、ホテルや店舗の従業員が預かり物から目を離したすきに、所有者ではない顧客が盗んでしまうケースも見受けられます。顧客から預かった物は、所定の保管場所へ運ぶまでは目を離さないように、従業員に徹底させましょう。

  3. (3)従業員による盗難

    ホテルや店舗の従業員が、顧客からの預かり物を盗難してしまうケースもあります。

    従業員による盗難が発生すると、ホテル・店舗全体におけるモラルが疑問視され、社会的評判の失墜につながりかねません。従業員に対するコンプライアンス教育を徹底しつつ、ダブルチェックや監視カメラなどによって不正行為の予防に努めましょう。

2、顧客からの預かり物を紛失したホテル・店舗の責任

顧客から預かった物を紛失したホテルや店舗は、商事寄託契約違反による債務不履行責任を負います。不可抗力を証明しなければ免責されないほか、明示的に預かっていない物についてもホテル・店舗側の責任が生じることがあるので要注意です

  1. (1)商事寄託契約違反の債務不履行責任を負う

    ホテルや店舗が顧客の物を預かった場合、ホテル・店舗と顧客の間に商事寄託契約が成立します(商法第595条)。

    商事寄託契約において、受寄者である商人(事業者)は、寄託者である顧客のために、善良な管理者の注意をもって寄託物を保管しなければなりません。報酬を受けない時であっても同様です。

    ホテル・店舗側の責任によって預かり物を紛失した場合は、顧客に対して商事寄託契約違反の債務不履行責任を負います。

  2. (2)不可抗力を証明しなければ、債務不履行責任を免れない

    ホテルや飲食店など、客の来集を目的として、場屋における取引をすることを業とする者を「場屋営業者」といいます。

    場屋営業者が客から寄託を受けた物品が滅失または損傷した場合、それが不可抗力によるものであったことを証明しなければ、客に対する損害賠償責任を免れることができません(商法第596条第1項)。

    不可抗力に当たるのは天災地変(例:落雷によって預かり物が燃えてしまった場合)などの例外的なケースに限られ、ほとんどの場合は寄託物の滅失・損傷に関する損害賠償責任を免れない点に注意が必要です。

  3. (3)預かっていなくても、事業者側が紛失の責任を負う場合がある

    客から預かった物でなくても、客が場屋の中に携帯した物品が、場屋営業者が注意を怠ったことによって滅失または損傷した時は、場屋営業者は客に対して損害賠償責任を負います(商法第596条第2項)。

    たとえば、ホテルの居室の鍵が壊れていたところ、その居室に第三者が侵入して客の物を盗んだ場合は、ホテル運営者が損害賠償責任を負う可能性があります。

    なお、「ホテル(店舗)内における盗難・紛失等については一切責任を負いません」というような免責事項を表示している例もありますが、このような免責事項を表示したとしても、商法に基づく場屋営業者の損害賠償責任を免れることはできません(同条第3項)。

3、従業員が預かり物を盗難した場合は、使用者責任も発生する

客から預かった物を従業員が盗難した場合は、その従業員を雇用する会社も「使用者責任」を負うことがあります。

  1. (1)使用者責任とは

    使用者責任とは、被用者(従業員)が事業の執行について第三者に損害を加えた場合に、使用者がその損害を賠償する責任です(民法第715条第1項)。

    被用者の選任および事業の監督について相当の注意をした時、または相当の注意をしても損害が生ずべきであった場合を除き、使用者は使用者責任を免れません。

    従業員が業務の一環として客から預かった物を盗んだ場合は、従業員自身が客に対して不法行為責任(民法第709条)を負うほか、会社も被害者に対して使用者責任を負います。

    なお、従業員が窃盗を行った場合に限らず、従業員の過失によって預かり物を紛失してしまった場合にも、会社は被害者に対して使用者責任を負うことがあります。

  2. (2)債務不履行責任と使用者責任は併存する

    預かり物の紛失(盗難を含む)について、商事寄託契約違反による債務不履行責任と使用者責任は併存します。

    したがって顧客は、ホテルや店舗の運営者に対して、債務不履行と使用者責任に基づく損害賠償をともに請求することが可能です。どちらか一方だけを主張することもできますし、両方を主張することもできます。

    ただし損害賠償の二重取りは認められず、実際に受けた損害の金額を上限として損害賠償を請求できるにとどまります。

  3. (3)債務不履行責任と使用者責任の時効期間の違い

    預かり物の紛失について生じる、商事寄託契約違反による債務不履行責任と使用者責任では、それぞれ時効期間が以下のとおり異なります。

    商事寄託契約違反による債務不履行責任 以下のうちいずれか早く経過する期間(民法第166条)
    ① 権利を行使できることを知った時から5年
    ② 権利を行使できる時から10年
    使用者責任 以下のうちいずれか早く経過する期間(民法第724条)
    ① 損害および加害者を知った時から3年
    ② 不法行為の時から20年


    預かり物の紛失について、ホテルや店舗の運営会社が完全に責任を免れるのは、債務不履行責任と使用者責任の時効期間が両方経過した時となります。

4、顧客から預かり物を紛失したホテル・店舗がとるべき対応

顧客から預かった物を紛失してしまった場合、ほとんどのケースにおいて、ホテルや店舗は顧客に対する損害賠償責任を免れません

まずは顧客に対して真摯(しんし)に謝罪し、損害賠償の内容を提案することをおすすめします。基本的には、代替品の購入対価に相当する金銭の提供を提案するのがよいでしょう。

ただし、顧客が不当に高額の損害賠償を請求してきたり、従業員に対してハラスメントを行ったりするケースもあります。また、預かり物に貴重品が含まれていたかどうかについて、顧客と争いになることもあります。このような場合は、顧問弁護士や警察と連携して対応に当たりましょう。

5、顧客とのトラブルへの対応は弁護士に相談を

ホテル・店舗において顧客とトラブルになってしまったら、本部と現場が連携して対応するとともに、弁護士にも相談することをおすすめします

弁護士はトラブルの内容を踏まえて、ホテル・店舗側が顧客に対して負う責任の内容を検討し、損害を最小限に抑えられる解決策をご提案いたします。必要に応じて、顧客への連絡や訴訟対応についても弁護士がサポート可能です。

顧問弁護士と契約すれば、顧客とのトラブルへの対応について、いつでもスムーズに相談できます。顧客とのトラブルに備えたいホテル・店舗の運営会社は、弁護士との顧問契約をご検討ください。

6、まとめ

顧客から預かった物を紛失してしまった場合、ホテル・店舗の運営会社は債務不履行責任または使用者責任を負うことがあります。必要に応じて弁護士に相談しながら、顧客との和解交渉を通じて穏便な解決を目指しましょう。

ベリーベスト法律事務所は、ホテル・店舗の事業運営に関するご相談を随時受け付けております。預かり物について顧客とトラブルになった場合や、その他事業運営上のお悩みについては、ベリーベスト法律事務所 山形オフィスまでお気軽にご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています

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