上司が残業を認めない場合の対処法|相談先や未払い残業代の請求方法
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山形労働局によると、2023年度に山形県内の労働基準監督署が監督指導を行った294事業場のうち、19事業場で賃金不払い労働がありました。
中には、多すぎる業務をこなすよう命じられているのに、「絶対に残業するな」「残業代は払わない」などと言われ、サービス残業を強いられている方もいるのではないでしょうか。
本記事では、上司が残業を認めない場合の相談先や対処法などを、ベリーベスト法律事務所 山形オフィスの弁護士が解説します。


1、上司が残業を認めないのは違法?
会社側の判断により、残業を禁止または許可制とすること自体は禁止されていません。
ただし、定時内では到底終わらないほどの業務を課されているにもかかわらず、残業を一切禁止するのは理不尽です。このような場合には、弁護士に相談して未払い残業代請求などを検討しましょう。
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(1)残業を禁止または許可制とすることは、問題ない
労働者(従業員)に対して残業を指示するかどうかは、使用者が自由に判断できます。
したがって、会社側の判断で残業を禁止し、または残業許可制を導入することは、法律上特に問題ありません。 -
(2)不必要な残業を自分の判断でした場合、残業代の請求は難しい
会社から残業命令を受けていないにもかかわらず、業務上の必要性がない残業を自分の判断で行った場合は、未払い残業代を請求できません。
このような残業は、会社の指揮命令下で行ったものとは認められず、残業代が発生する労働時間に当たらないためです。 -
(3)業務量が多すぎる場合は、指示されていなくても残業代を請求し得る
会社から残業の指示を受けていなかったとしても、課されている業務量があまりにも多いため、必然的に残業せざるを得ないというケースがあります。
このような状況にあるなら、自分の判断で残業をした場合でも、会社に対して未払い残業代を請求できる可能性があります。会社による黙示の残業指示があったものとして、残業が労働時間に当たると判断される余地があるためです。
2、上司が残業を認めない場合の相談先
業務量が多すぎるにもかかわらず、上司から「絶対に残業するな」「残業代は払わない」などと言われて困っている方は、次の窓口などへ速やかに相談しましょう。
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(1)社内の相談窓口|人事担当者など
上司との関係性や残業などについて、社内に相談できる窓口や部署がある場合は、まずそちらに相談してみましょう。一例として、人事担当者(人事部)やハラスメント相談窓口などが挙げられます。
相談先となる窓口や部署の独立性が確保されていれば、上司による不適切な指示を是正してもらえる可能性が高いでしょう。
ただし、規模が小さい企業などにおいては、人事部が置かれていなかったり、経営陣や上司と癒着していたりするケースもあります。
このような場合には、社内の窓口に相談しても改善は期待できないので、外部の窓口に相談しましょう。 -
(2)労働組合
事業場に労働組合が設置されている場合は、残業に関する理不尽な指示について、労働組合に相談してみましょう。
労働組合は、労働条件の改善などを通じて、労働者の権利や利益を守る役割を担っています。労働組合に相談すれば、会社との団体交渉において、業務量の軽減や残業代の適切な支払いなどを求めてもらえるかもしれません。 -
(3)労働条件相談ほっとライン
「労働条件相談ほっとライン」は、労働基準関係法令に関する問題に関する電話相談窓口です。厚生労働省の委託により、株式会社東京リーガルマインドが運営しています。
労働条件相談ほっとラインに電話をかけると、専門の相談員に上司からの理不尽な指示について相談したり、関係機関の紹介を受けたりすることができます。
電話相談は無料で、全国どこからでも利用可能です。匿名での相談もできます。
参考:「労働条件相談「ほっとライン」」(厚生労働省) -
(4)労働基準監督署
労働基準監督署は、労働基準関係法令などを順守しているかどうかについて、各事業所を監督する行政官庁です。各地域に設置されています。
労働基準監督署に対しては、労働基準法違反に当たる会社の行為について申告をすることができます(労働基準法第104条第1項)。
違法な長時間残業を指示された、残業代が未払いとなっているなどの事情がある場合は、労働基準監督署への相談を検討しましょう。
ただし労働基準監督署は、労働者の代わりに残業代を回収してくれるわけではありません。また、労働基準監督署に対して申告を行っても、必ず調査や行政指導を行ってくれるとは限らない点にもご注意ください。 -
(5)弁護士
法律の専門家である弁護士に相談すれば、上司の理不尽な指示に対して、法的根拠に基づいて反論するためのアドバイスを受けられます。
また、労働者の代理人として迅速かつ的確に行動してもらえる点も、弁護士に相談することの大きなメリットです。違法な長時間残業やサービス残業の指示をやめさせたり、未払い残業代の支払いを請求したりする際には、弁護士に代理人となってもらうことも可能です。
上司から理不尽な指示を受けている状況を速やかに改善したい場合は、早めに弁護士にご相談ください。
お問い合わせください。
3、未払い残業代の請求方法
残業をしているにもかかわらず、会社が「残業をするな」「残業代は払わない」などと頑なに主張している場合は、未払い残業代が発生している可能性が高いです。
以下の手順で、未払い残業代の回収を目指しましょう。
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(1)残業の証拠を確保する
未払い残業代請求を成功させるためには、残業の客観的な証拠を豊富に確保することが重要です。
一例として、以下のような証拠が役立ちます。これらの証拠を、できる限りたくさん集めましょう。- タイムカード
- 勤怠管理システムの記録
- 上司の承認印がある業務日報など
- オフィスの入退館記録
- 会社システムへのアクセス記録
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(2)未払い残業代の額を計算する
残業代の金額は、以下の式によって計算します。
残業代の計算式
残業代=1時間当たりの基礎賃金(※)×割増率×残業時間数
1時間当たりの基礎賃金の算出方法
1か月の総賃金(以下の手当を除く①)÷月平均所定労働時間②
① 総賃金から除外される手当
- 残業手当(時間外労働手当、休日労働手当、深夜労働手当)
- 家族手当(扶養人数に応じて支払うものに限る)
- 通勤手当(通勤距離等に応じて支払うものに限る)
- 別居手当
- 子女教育手当
- 住宅手当(住宅に要する費用に応じて支払うものに限る)
- 臨時に支払われた賃金
- 1か月を超える期間ごとに支払われる賃金
② 月平均所定労働時間
年間所定労働時間÷12か月
割増賃金率は、残業の種類別に、以下の通り定められています。
残業の種類 残業の概要 割増率 法定内残業 所定労働時間を超え、法定労働時間を超えない残業 割増なし 時間外労働 法定労働時間を超える残業 通常の賃金に対して125%
※月60時間を超える部分については、通常の賃金に対して150%休日労働 法定休日における労働 通常の賃金に対して135% 深夜労働 午後10時から午前5時までに行われる労働 通常の賃金に対して125%
上記の方法で計算した残業代の額から、すでに支払われた額を差し引くと、請求できる未払い残業代の額が分かります。
正確に未払い残業代の額を計算するためには、弁護士に依頼しましょう。 -
(3)内容証明郵便を送付して、会社と交渉する
残業の証拠の確保と未払い残業代の計算が完了したら、会社に対して内容証明郵便で請求書を送付しましょう。
内容証明郵便に記載すべき主な事項は、以下のとおりです。- 請求する未払い残業代の額
- 未払い残業代の支払期限
- 支払わなければ、法的措置を講ずる旨
内容証明郵便に対する返信があったら、会社との間で未払い残業代の精算に関する交渉を行います。弁護士を代理人とすれば、会社に対して法的な根拠に基づく主張を伝えることができます。
会社との間で合意が調ったら、その内容を記載した和解合意書を締結して、未払い残業代の支払いを受けましょう。 -
(4)労働審判・訴訟を検討する
未払い残業代の支払いを求めても、会社が応じないケースもあります。
その場合は、労働審判や訴訟を利用しましょう。客観的な立場にある裁判所を通じて、未払い残業代に関するトラブルを解決することができます。
労働審判や訴訟の手続きは専門的なので、利用に当たっては弁護士のサポートを受けましょう。
お問い合わせください。
4、残業に関するトラブルを弁護士に相談するメリット
会社との間で残業に関するトラブルが発生した場合は、弁護士に相談することをお勧めします。
弁護士に相談することの主なメリットは、以下のとおりです。
- 上司の指示内容や会社の体制などが、法的に問題ないかどうか判断してもらえる
- 残業の証拠を協力して集めることができる
- 未払い残業代の額を正確に計算したうえで、適正な請求ができる
- 会社との交渉を任せられる
- 労働審判や訴訟など、専門性の高い裁判手続きも一任できる
早い段階から弁護士のサポートを受けることにより、会社とのトラブルを適正な条件で解決できる可能性が高まります。
上司から理不尽な指示を受けた、残業代が正しく支払われないなどの理由でお悩みの方は、速やかに弁護士へご相談ください。
5、まとめ
上司が残業を認めない場合でも、定時内に終わらないほど大量の業務を課されている場合は、未払い残業代を請求できる可能性があります。
未払い残業代の請求に当たっては、金額を正確に計算することや、法的根拠に基づく主張を掲げて会社と交渉することなどが大切です。そのためには、法的知識を有する弁護士への相談が役立ちます。
ベリーベスト法律事務所は、未払い残業代請求に関するご相談を随時受け付けております。会社や上司が残業申請を認めず、残業代が適切に支払われていない場合は、ベリーベスト法律事務所へご相談ください。
お問い合わせください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています
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