「旦那が逃げた、離婚したい…」失踪して行方不明の夫と離婚する方法

2023年10月31日
  • 離婚
  • 旦那
  • 逃げた
  • 離婚
「旦那が逃げた、離婚したい…」失踪して行方不明の夫と離婚する方法

山形県が公表している「令和4年 人口動態統計(確定数)の概要」によると、令和4年に山形県内で離婚した夫婦は1197組で、離婚率は1.16でした。全国順位では42位となっており、県内の離婚率は全国平均よりも低くなっています。

数ある夫婦の中には、旦那が突然に失踪し、何年も自宅に戻らないというケースがあります。このようなとき、正常な夫婦生活を送ることができず、「家庭から逃げた旦那と離婚をしたい」と考える方も多いでしょう。

旦那が逃げてしまった状態だと、話し合いでの離婚を成立させるのは困難です。そのため、通常とは異なる方法により離婚を進めていく必要があります。本コラムでは、家庭から逃げた旦那との離婚について知っておくべき事柄を、ベリーベスト法律事務所 山形オフィスの弁護士が解説します。


離婚・男女問題についてはこちら 離婚・男女問題についてはこちら

1、家庭から逃げた旦那と離婚する方法

最初に、家庭から逃げた旦那と離婚する方法として考えられることを、3つに分けて解説します。

  1. (1)旦那の居場所がわかっているなら協議離婚や離婚調停

    家庭から逃げた旦那の居場所がわかっているのであれば、旦那に連絡をして協議離婚(話し合いによる離婚)を進めていきます。まずは、電話、メール、手紙などで離婚の意思があることを伝えて、話し合いを行うとよいでしょう。

    旦那に連絡をしても、離婚に応じてくれないという場合には、家庭裁判所に離婚調停の申立てをするのも有効な手段です。

    ただし、離婚調停は、相手方の住所地を管轄する家庭裁判所で行わなければならないため、遠方に逃げているという場合には、調停期日への出頭が負担になる可能性があります。
    もっとも、近年では電話やWEBを用いた調停への出席も可能となっています。

  2. (2)行方不明で連絡もつかない場合には離婚裁判

    逃げた旦那が行方不明で連絡もつかないような場合には、協議離婚や離婚調停で離婚をすることができません。そのため、離婚裁判によって離婚を進めます。

    離婚裁判で離婚を成立させるには、民法が定める法定離婚事由が必要となります。
    法定離婚事由の内容は第2章で詳しく説明しますが、旦那が失踪しているようなケースでは、法定離婚事由が認められるケースが多いでしょう。

  3. (3)失踪宣告制度の利用により婚姻関係の解消も可能

    失踪宣告制度とは、生死不明の人に対して、法律上「死亡したもの」とみなすことができる制度です。生死が7年間明らかでない場合には、失踪宣告の申立てにより、裁判所が失踪宣告を行うことができます。

    旦那が失踪宣告により死亡したものとみなされれば、婚姻関係は解消されますので、残された配偶者は再婚することも可能になります。

    さらに、離婚の場合とは異なり、配偶者としての地位は失われませんので、失踪宣告を受けた旦那の遺産を相続することも可能です。

まずはお気軽に
お問い合わせください。
電話でのお問い合わせ
【通話無料】平日9:30~21:00/土日祝9:30~18:00
メールでのお問い合わせ一覧
営業時間外はメールでお問い合わせください。

2、裁判で認められる5つの法定離婚事由とは

離婚裁判をするためには、法定離婚事由(不貞行為・悪意の遺棄・3年以上の生死不明・回復の見込みのない強度の精神病・その他婚姻を継続し難い重大な事由)が必要になります。

  1. (1)不貞行為

    不貞行為とは、配偶者以外の者との間で性的関係(肉体関係)を持つことです。いわゆる「不倫」と呼ばれるものが不貞行為にあたる、と考えてよいでしょう。

    旦那が家庭から逃げたあと、妻とは別の女性と一緒に暮らしていて、その女性との間に子どもができたというケースもあるでしょう。
    この場合は「不貞行為があった」といえますので、離婚裁判が認められる可能性が高いです。また、不倫相手に対しても不倫慰謝料を請求することができます。

  2. (2)悪意の遺棄

    悪意の遺棄とは、正当な理由がないにもかかわらず、夫婦の同居・協力・扶助義務を果たさないことです。

    旦那が家庭から逃げて同居に応じないという場合には、正当な理由のない同居義務違反となりますので、悪意の遺棄に該当する可能性があります。

    また、失踪して行方不明になった旦那から一切生活費(婚姻費用)の支払いがないという場合にも、正当な理由のない扶助義務違反として、悪意の遺棄に該当する可能性があります。

  3. (3)3年以上の生死不明

    旦那が失踪してから3年以上生死不明の状態になっている場合には、法定離婚事由に該当します。

    「生死不明」が要件となりますので、居場所がわからなかったとしても電話やメールで連絡が取れる状態であれば、生死不明とはいえず、法定離婚事由には該当しません。

  4. (4)回復の見込みのない強度の精神病

    夫婦生活に必要な協力・扶助という義務が果たせない程度の精神病にかかっている場合には、法定離婚事由となります。

  5. (5)その他婚姻を継続し難い重大な事由

    上記のような法定離婚事由に該当しない場合でも、婚姻関係の継続が困難な状態になっているケースもあるでしょう。そのようなときは、「その他婚姻を継続し難い重大な事由」として、離婚請求が認められる可能性があります。

    旦那が一方的に逃げて行方不明となり、連絡も取れない状態になっている場合には、正常な夫婦生活を送ることは困難です。このような状態が長期間続いているようであれば、「その他婚姻を継続し難い重大な事由」が認められ、裁判で離婚できる可能性があるでしょう。

3、行方不明の旦那相手に離婚裁判を行うときの流れ

3章では、行方不明になった旦那に対して、離婚裁判を行うときの流れを解説します。

  1. (1)離婚訴訟の提起

    裁判で離婚をするためには、裁判所に訴状を提出して、離婚訴訟を提起します。

    訴訟を提起する裁判所は、夫婦いずれかの住所地を管轄する家庭裁判所になりますので、旦那が行方不明の場合には、原告であるご自身の住所地を管轄する裁判所に訴状を提出することになります。

  2. (2)公示送達

    裁判所に提出された訴状は、被告に送達する必要があります。
    しかし、旦那が行方不明になっている場合、通常の方法では訴状の送達を行うことができません。そのようなときに、「公示送達」という方法を採ることになります。

    公示送達とは、裁判所書記官が送達すべき書類を保管して、いつでも送達を受ける人に交付する旨を裁判所に掲示して行う送達方法です。掲示開始から2週間経過により訴状送達の効果が生じるため、離婚訴訟を始めることができます。

  3. (3)口頭弁論期日で離婚原因の立証

    一般的な裁判であれば、被告が口頭弁論期日に出頭しない場合には、原告の主張をすべて認めたものとして、欠席裁判が行われます。しかし、公示送達が行われる事案では、口頭弁論期日が行われても被告は出頭することはありませんが、欠席裁判にはなりません。

    そのため、原告において、法定離婚事由が存在することなどを証拠によって立証しなければ、裁判所に離婚を認めてもらうことができないという点に注意が必要です。

  4. (4)判決

    原告による主張立証により、裁判所が法定離婚事由の存在を認めた場合には、裁判所は離婚を認める判決を言い渡します。

    判決正本が送達された日から2週間が経過すると、判決が確定し、確定判決謄本と確定証明書を添付して、単独で離婚届を提出することが可能です。

    なお、離婚届の提出は、判決確定の日から計算して10日以内に行わなければなりませんので、早めに対応するようにしましょう。

4、失踪した旦那と離婚したい! 弁護士に相談するべき理由

失踪した旦那との離婚をお考えの方は、弁護士に相談することをおすすめします。

  1. (1)音信不通の旦那が反応してくれる可能性がある

    旦那の居場所がわかっているケースでは、まずは、夫婦の話し合いによる協議離婚を進めていきます。

    しかし、ご自身で連絡を取ろうとしても、相手から無視されるなどして話し合いを行うことができないケースも多いです。このようなケースであっても、弁護士が代理人として連絡を取ることで、相手が反応してくれる可能性があります。

    失踪(行方不明)に限らず、離婚したいけれど対応に困っているという方は、まずは弁護士に相談するとよいでしょう。

  2. (2)適切な離婚方法を選択できる

    旦那が失踪して行方不明になっている場合には、離婚訴訟以外にも失踪宣告という方法により婚姻関係を解消することができます。また、離婚訴訟を提起する場合には、法定離婚事由が必要になりますが、失踪の経緯、期間、生活費支払いの有無などにより、法定離婚事由のうちいずれに該当するかの判断が異なってきます。

    このように、失踪した旦那と離婚する場合には、適切な離婚方法を選択する必要がありますが、そのためには離婚問題に詳しい弁護士のアドバイスやサポートが不可欠です。

  3. (3)複雑な離婚手続きを任せることができる

    弁護士に依頼をすれば、複雑な離婚手続きをすべて任せることができるというメリットがあります。

    公示送達を利用するためには、所在不明である旨を調査して、裁判所に報告書を提出しなければなりませんし、裁判では法定離婚事由に該当する事情を主張立証していかなければなりません。

    一般の方では、このような複雑な手続きを適切に行うことは困難ですので、弁護士に任せるのが安心です。

5、まとめ

旦那が家庭を捨てて逃げたという場合には、正常な夫婦生活を送ることができません。そのため、旦那との離婚を検討する方も少なくないでしょう。ただし、旦那が行方不明になっているケースでは、離婚裁判を起こす必要があります。

行方不明者を相手とする裁判は通常の裁判とは異なる特殊性があるため、弁護士のサポートが不可欠となります。

連絡してもまともに取り合ってくれない旦那・行方不明の旦那との離婚をお考えの方は、まずは、ベリーベスト法律事務所 山形オフィスまでお気軽にご相談ください。離婚問題に詳しい弁護士が、親身になってサポートいたします。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています