養育費調停でよく聞かれることや有利に進めるポイントを解説
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裁判所が公表している司法統計によると、2023年に山形家庭裁判所に申立てのあった養育費請求調停の件数は、123件でした。
子どもがいる夫婦が離婚する場合、養育費の取り決めが重要です。しかし、取り決めたはずの養育費の支払いが滞る、また、取り決めた額では養育ができず金額を変更したい場合などは、家庭裁判所に「養育費調停」の申し立てをすることで、解決できる可能性があります。
今回は、養育費調停でよく聞かれることや、有利に進めるためのポイントをベリーベスト法律事務所 山形オフィスの弁護士が解説します。
1、養育費に関する調停は3種類ある
養育費に関する調停には、以下の3つの種類があります。
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(1)養育費請求調停
養育費請求調停とは、離婚後に養育費の取り決めを行う際に利用される調停です。
具体期には、以下のケースで養育費請求調停は利用されます。- 取り決めをしていた養育費が支払われない
- そもそも離婚時に養育費の取り決めをしていなかった
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(2)養育費増額調停
養育費増額調停とは、離婚時に取り決めた養育費の金額が不相当になった場合に養育費を増額したい際に利用される調停です。
養育費の増額が認められる事由としては、以下の事由が挙げられます。- 義務者(※)の収入が増加した
- 権利者(※)の収入が減少した
- 子どもの教育費が増加した
※義務者=養育費を支払う義務がある方
※権利者=養育費を受け取る権利がある方 -
(3)養育費減額調停
養育費減額調停とは、離婚時に取り決めた養育費の金額が不相当になった場合に養育費を減額したい際に利用される調停です。
養育費の減額が認められる事由としては、以下の事由が挙げられます。- 義務者の収入が減少した
- 権利者の収入が増加した
- 権利者が再婚して、再婚相手と子どもが養子縁組をした
2、養育費調停でよく聞かれること
養育費調停の調停委員は、家庭問題の知識や経験もつ一般人から2名、裁判官1名で構成されます。調停委員に正しく自分の主張をすることで、養育費獲得や金額が決まるため、しっかりと準備をして臨みましょう。
以下では、養育費調停でよく聞かれることを紹介します。どのように答えるかをあらかじめ考えておくとよいでしょう。
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(1)お互いの収入と支出
養育費調停では、お互いの収入に基づいて養育費の金額を話し合うことになりますので、どのくらいの収入を得ているのかが確認されます。
そのため、収入を証明する以下の書類の提出を求められます。- 源泉徴収票
- 給与明細
- 確定申告書
また、収入だけではなく支出も確認されます場合がございますので、あらかじめ家計簿などを付けておき、子どもの食費や生活費、交通費などの1か月あたりの支出額をまとめておくことも良いでしょう。
また、以下の書類も準備しておくと望ましいです。- 子どもの学費(教材、制服、部活動費、塾費など)の請求書、領収書
- 子どもの保育費(保育園、ベビーシッター代など)の請求書、領収書
- 子どもの医療費の請求書、領収書
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(2)現在の生活状況
養育費の金額を定めるにあたっては、現在の生活状況も考慮要素のひとつとなります。
現在の生活状況として聞かれる具体的な内容としては、以下のものが挙げられます。- 住居は持ち家か賃貸か
- 親からの援助を受けているか
- 公的な支援を受けているか
- 子どもの健康状態
- 子どもの進学希望の有無
- 仕事は正社員か非正規雇用か
現在の生活状況を踏まえて、養育費の金額の正当性が判断されますので、上記の内容がわかる資料を準備しておくとよいでしょう。
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(3)提示した養育費の根拠
養育費調停では、どのくらいの金額の養育費を希望するかが聞かれますので、希望する養育費の金額を明確にしておくとともに、その根拠を説明できるようにしましょう。
一般的な養育費の相場は、裁判所のサイトで公表している「養育費算定表」を利用することで把握することができます。相場どおりの養育費を請求するのであれば特に説明はいりませんが、相場を上回る養育費を請求するのであれば、その根拠をしっかりと説明しなければなりません。
合理的な理由があれば相場を上回る養育費を請求することも可能ですので、調停委員にしっかりと説明できるように準備しておきましょう。 -
(4)養育費を支払う期間
養育費は、未成熟な子どもを養育するために支払われる費用で、子どもが社会的・経済的に独立するまで支払いが続きます。法律上養育費の支払いの終期については、明確な年齢が定められているわけではありませんので、当事者の話し合いで決めていく必要があります。
一般的には、子どもが成人する18歳までと定めることが多いですが、大学への進学を予定している場合には、大学を卒業するまでと定めることもあります。
調停では、いつまで養育費の支払いを求めるかを聞かれますので、あらかじめ考えておくとよいでしょう。 -
(5)支払い方法
養育費の支払いは、毎月一定額を定期的に支払うのが一般的です。支払い方法としては、銀行口座への振り込みが選択されるケースがほとんどですので、振込先の口座をどこにするのかを考えておきましょう。
親権者自身の口座を指定することもできますし、子どもの口座を指定することも可能です。また、支払いを確実にしてもらうためにも、相手の給料日のすぐ後の日付を支払日に指定するとよいでしょう。 -
(6)学費や医療費など別途かかる費用について
養育費には、子どもが生活していくために必要になる衣食住に必要な費用、教育費、医療費などが含まれています。しかし、養育費算定表では、公立学校への進学を想定していますので、私立学校や大学への進学を予定している場合には、毎月の養育費とは別に支払いを求めていく必要があります。
また、急な病気や事故により高額な医療費の支出が必要になった場合も養育費算定表では考慮されていませんので、毎月の養育費とは別に支払いを求めていくことができます。
将来の進学や手術などが予定されている場合には、養育費調停で考慮してもらうことができますので、調停委員に具体的な事情を伝えるようにしてください。
3、養育費調停の手続きの流れ
養育費調停の手続きは、以下のような流れで進んでいきます。
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(1)調停申立
養育費調停を利用する場合、家庭裁判所に養育費請求調停・養育増額調停・養育費減額調停のいずれかの申立てを行います。
申立ての際には、以下の書類を準備して裁判所に提出する必要があります。- 申立書
- 事情説明書
- 進行に関する照会回答書
- 子どもの戸籍謄本(全部事項証明書)
- 申立人の収入に関する資料(源泉徴収票、給与明細など)
また、申立てにかかる費用として、収入印紙1200円(子ども1人につき)、予納郵券1000円~2000円程度が必要になります。
調停の申立てが受理されると、第1回の調停期日の日時が決められ、当事者双方に通知されます。 -
(2)調停当日の流れ
当事者は、決められた調停期日に家庭裁判所に出頭します。
始まるまでの時間は、申立人待合室または相手方待合室で待機していますので、待合室で相手と顔を合わせる心配はありません。
調停期日では、裁判官1人と調停委員2人からなる調停委員会が夫婦の間に入って、話し合いを進めていきますが、裁判官は常に同席しませんので、基本的には男女2人の調停委員が対応することになります。
調停の流れは、以下の通りです。- ① 申立人と相手方が交互に調停室に入り、調停委員から申立てに至った経緯や養育費に関する意見を聞かれる(30分程度)。
- ② 初回の調停で合意が成立しない場合には、次回の調停期日が設定され、終了。
- ③ 次回以降も同じような流れで手続きが行われる。
当事者の合意が成立するか、成立する見込みがない状況になるまで、調停期日は続きます。
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(3)調停成立
当事者の合意が成立すれば調停成立により養育費調停は終了となります。
当事者が合意した内容については、調停調書にまとめられ、法的拘束力をもつことになります。もし、義務者が養育費の支払いに応じないときは、調停調書を根拠として、差押えを申し立てることも可能です。 -
(4)調停不成立の場合は審判に移行
合意が成立しない場合は、調停は不成立となり調停手続きが終了します。
調停手続き終了後は、自動的に審判に移行し、今度は裁判官がこれまでの調停での経緯などを踏まえて養育費に関する決定を行います。
なお、裁判所の審判に不服があるときは、審判書の送達を受けてから2週間以内であれば“即時抗告”を行うことができます。
即時抗告とは、審判に対する不服申立ての手続きであり、高等裁判所で再審理が行われます。
4、養育費調停を有利に進めるポイント
養育費調停を有利に進めるためには、以下のポイントを押さえておくことが大切です。
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(1)養育費算定表で相場を確認しておく
養育費調停や審判では、基本的には養育費算定表に基づいて、養育費の金額が決められます。
合理的な理由がないにもかかわらず、養育費算定表を上回る養育費を請求するのは困難ですので、まずは養育費算定表を確認し、相場となる養育費がどのくらいであるかを把握しておきましょう。 -
(2)提示する養育費への根拠と証拠を用意する
養育費調停では、調停委員から養育費としてどのくらいの金額を希望するのかが聞かれます。養育費算定表どおりでよければ、収入に関する資料を提出するだけでよいですが、相場を上回る養育費を請求するのであれば、相場以上の養育費を必要とする合理的な理由を説明しなければなりません。
調停委員や相手方に納得してもらうためにも、こちらの説明を裏付ける根拠や証拠を準備しておくことが大切です。 -
(3)調停委員には冷静かつ誠実な態度で対応する
調停を有利に進めるためには、調停委員を味方につけることが重要です。調停委員は、基本的には中立的な立場で対応しますが、感情的な態度で接してしまうと、味方をしたいという気持ちに少なからず影響があるでしょう。
調停委員を不快な気持ちにさせてしまうと、相手を説得するなど積極的に働きかけてくれなくなるおそれがありますので、冷静かつ誠実な態度で接するよう心がけてください。 -
(4)弁護士に相談する
初めての調停ではわからないことも多いでしょう。自分だけでは対応が不安だと感じるときは、離婚問題に実績がある弁護士に相談するとよいでしょう。
弁護士に相談をすれば、養育費調停で聞かれることを踏まえて、具体的な対応についてアドバイスを受けることができます。弁護士のアドバイスに従って調停を進めれば、自分だけで進めるよりも有利な結果が得られる可能性が高くなるでしょう。また、弁護士に依頼をすれば、実際の調停期日に同行も可能なので、不安なく調停に臨むことができます。
お問い合わせください。
5、まとめ
養育費調停では、調停委員から聞かれる内容がある程度決まっていますので、事前に準備をしておくことでスムーズに調停手続きを進めることができます。
養育費は、子どもの将来のためにも重要なお金になりますので、不利な条件にならないようにするためにも、まずは離婚トラブルの解決実績がある弁護士に相談するのがおすすめです。
ベリーベスト法律事務所 山形オフィスには、離婚問題の実績がある弁護士が在籍しております。養育費調停をお考えの方は、まずはお気軽にご相談ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています
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