過積載とは|法律での基準や科される罰則について解説

2024年09月04日
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過積載とは|法律での基準や科される罰則について解説

2022年における道路交通法違反の取り締まり件数は、505万3271件で、積載違反は1万1440件でした。過剰な積載物を積んだ積載運転をすると制動距離に影響を及ぼし、事故につながりかねません。

特に中型や大型トラックの過積載は自分だけでなく、周りの命にも影響を及ぼすリスクが高いため、運転手にも事業者にも相応の罰則が科せられます。そこで今回は過積載の基準や過積載にならないための対策方法について解説します。

出典:「令和5年交通安全白書(全文)」(内閣府)


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1、基礎知識│車両の重量の計算方法

どのような場合に過積載となるか知るためには、まず車両の重量の計算方法などを知る必要があります。本章では、車両に関する用語や各計算方法について簡潔に解説します。

  1. (1)車両重量とは

    車両重量とは、トラックが今すぐに発進できる状態の重量のことをいいます。

    具体的には、ガソリンが満タンで各種オイルもすべて補充されている状態です。また、車両ごとの規定の重量および標準仕様の荷台も、車両重量に含まれます。

    一方で、乗員や荷物、工具、スペアタイヤなど車両以外の重量は含まれません。

  2. (2)車両総重量とは

    車両総重量とは、トラックの重量に「乗車定員」や「最大積載量の荷物」を積んだ総重量です。

    乗員定員とは、車両ごとに決まっている同乗可能人数(定員数)で、車検証に記載されています。車両総重量以上の重量になると過積載になる可能性が高まります。

  3. (3)最大積載量とは

    最大積載量とは、車両総重量から車両重量などを引いた荷物の量をいいます

    最大積載量の計算方法は、以下の通りです。

    車両総重量−(車両重量+乗車定員×55キログラム)=最大積載量


    最大積載量は、車両の総重量から車両の重量と運転手と同乗者の体重を引いて求めます。また、運転手や同乗者の体重は、1人あたり55キログラムで計算するのが一般的です。

  4. (4)アマゾンフレックスなどの個人事業主も対象になる

    過積載のルールを順守すべきなのは大手の運送業者だけではありません。アマゾンフレックスなどの個人事業主や引っ越し業者、建築業者も、運送を行う場合は過積載の制限や罰則の対象になります。

    また、個人が自家用車で荷物を運搬する場合にも、最大積載量を超えていれば処罰の対象となります。このように過積載や過積載による罰則は、運送業者だけの問題ではなく、自動車を運転するすべての人が守られなければならないルールなのです。

2、過積載とは|車両の種類別過積載になる基準と罰則

そもそも過積載とは、道路運送車両法などで定められた最大積載量を超えて荷物を運搬することをいいます。最大積載量を1キログラムでも超えてしまうと、過積載として違法となり罰則が科せられるため、注意が必要です。

運搬する貨物自動車ごとの適切な積載量や罰則について、以下より詳しく解説していきます。

  1. (1)過積載の違反行為となる基準│積載車両ごとの違い

    過積載とならないためには、自分が運転する貨物自動車がどれだけの最大積載量を持つ車両であるか知ることが重要です

    自動車の種類によって最大積載量の一例は以下の表の通りです。

    自動車の種類 車両重量 最大積載量
    トラック 小型 3.5トン未満 2.0トン未満(免許の種類による)
    準中型 3.5〜7.5トン未満 2〜4.5トン未満(免許の種類による)
    中型 7.5〜11トン未満 4.5〜6.5トン未満(免許の種類による)
    大型 11トン以上 6.5トン以上(トラックの形状による)
    ダンプカー 小型 メーカー・車種による 2.0トン程度
    中型 メーカー・車種による 3.5トン程度
    大型 メーカー・車種による 9.0トン程度


    もっとも、上記の表をみてわかるようにダンプカーのメーカー・車種によって最大積載量が異なるため、運転するダンプカーがどの程度まで積載可能なのか、確認することが大切です。積載量については、車検証を確認することやメーカーに問い合わせることで知ることができます。

  2. (2)過積載の罰則│反則金・懲役・再発防止命令など

    過積載の罰則は、主に以下の3つに分けられます(中型・大型トラックの運転手の場合)。

    1. ① 最大積載量の2倍以上を積んだ場合
    2. ② 最大積載量の2倍未満〜1.5倍以上の場合
    3. ③ 最大積載量の1.5倍未満の場合


    たとえば①のケースだと、トラックの運転手には違反点数や反則金だけではなく、免許停止や6か月以下の懲役が科せられることもあります。また③のケースであっても、違反点数だけでなく、3万円程度の反則金の支払いが必要です。

    対象者別の罰則は次項で詳しく解説します。

  3. (3)罰則を受ける人│事業者・運転手・荷主

    過積載の罰則の対象となるのは、運転手だけではありません荷物の運搬を依頼した荷主や運送会社などの事業者もその対象となります。また、過去にも過積載の違法行為があった場合、違反回数によって重い罰則が科されます。

    運転手・事業者・荷主ごとの過積載の違反内容と違反回数による罰則は、以下の表の通りです。

    運転手の罰則│違反点数・反則金など
    ① 最大積載量の2倍以上を積んだ場合 普通車 違反点数3点
    反則金3万5,000円
    中型・大型トラック 違反点数6点
    免許停止
    6か月以下の懲役または10万円以下の罰金
    ② 最大積載量の2倍未満〜1.5倍以上の場合 普通車 違反点数2点
    反則金3万円
    中型・大型トラック 違反点数3点
    反則金4万円
    ③ 最大積載量の1.5倍未満の場合 普通車 違反点数1点
    反則金2万5,000円
    中型・大型トラック 違反点数2点
    反則金3万円


    事業者の罰則│車両停止処分
    ① 最大積載量の2倍以上を積んだ場合 初回 30日×違反車両数
    2回目 80日×違反車両数
    3回目 200日×違反車両数
    4回目 500日×違反車両数
    ② 最大積載量の2倍未満〜1.5倍以上の場合 初回 20日×違反車両数
    2回目 50日×違反車両数
    3回目 130日×違反車両数
    4回目 330日×違反車両数
    ③ 最大積載量の1.5倍未満の場合 初回 10日×違反車両数
    2回目 30日×違反車両数
    3回目 80日×違反車両数
    4回目 200日×違反車両数
  4. (4)過積載による危険性

    過積載にはさまざまな危険性があるため、法律上、罰則をつけて厳しく取り締まりをしています。

    過積載の危険性は、具体的に以下のケースがあります。

    • ブレーキのききが悪くなる
      過積載をすると、車体の重さによってブレーキをかけてから完全に止まるまでの制動距離が長くなるリスクがあります。結果、通常の荷物量であれば止まれたはずだったのに止まり切れず、追突してしまうこともあるでしょう。また、過積載により規定以上の重量があるため、甚大な追突事故につながる可能性もあります。

    • スピードが上がる
      積荷の過剰な重さにより、下り坂で思った以上のスピードが出てしまうことがあります。一度スピードが出てしまうと、過積載でブレーキのききが悪くなっていることも相まって、思わぬ事故のおそれもあります。また、交差点や山道など急なカーブでは、荷物の重さに車体が左右に振られて、横転する可能性もあります。

    • 荷崩れが起こる
      過積載により荷物が安定せず、荷崩れを起こすと、後続車が事故を起こすおそれがあります。実際に高速道路上の落下物が原因で事故が起こることもしばしばあります。また、落下した荷物の荷主からも責任を追及される可能性があります。

3、過積載にならないための対策

過積載にならないためには、日頃からの対策が重要です。過積載を防止するための2つの対策について解説します。

  1. (1)トラック・積荷総重量の計測

    まず、基本的な対策として考えられるのは、トラックの総重量を計測することです。積荷や資材を目視で確認する方法もありますが、正確な判断のためには、トラックスケール(計量器)の導入が欠かせません。

    また、トラックスケールであれば、荷物ごとの測定をしなくとも、トラックごと重量を測定することができます。

    もっとも、スケールを載せる地盤がもろいなど、設置そのものができない場合もあります。そのような場合には、地上薄型などのスケールやレンタルもあるため、まずは取扱業者に相談してみましょう。

    なお、ダンプカーなどの大型車には自動で積載量を計測する自重計の取り付けが義務になっています。自重計で積載量を確認することで過積載を防止することができます。

  2. (2)過積載防止計画の策定

    次に会社内で過積載防止計画の策定をすることも重要です。

    たとえば、以下のような一定のルールを設ける方法が考えられます。

    1. ① 荷物の重量は、最大積載量の80%以下にして積載する
    2. ② 重量がわからない場合には、荷台のふちを越えないようにする


    また、ルールを策定したら運転手だけでなくチェック担当者を決めることも大切です。社員全員が過積載防止計画を守ることで安全な労働環境を提供し、過積載による事故を防止することができます。

  3. (3)搬出車両記録の徹底

    トラックの総重量や積荷重量を計測したら、搬出車両記録を作成することも過積載防止のためには必須です。計測日時・運転手名・積載量・積荷の種類などを記録しておくことで社員全員が過積載の違法行為をしないための意識が高まります。

    また、過積載について問題が起こった場合には、記録があることで問題解決のために素早く対応することができます。さらには、搬出車両記録を作成する作成者や管理者を設置することでダブルチェックを行うことができます。

    記録を管理することで、ルールの順守が徹底でき、過積載が現場で起こる可能性を減らすことができます。

  4. (4)荷姿の基準の徹底

    荷姿基準の徹底も過積載防止に役立ちます。荷姿とは、輸送の際の荷物の外観を示す物流の用語です。簡単にいうと、輸送時の梱包の状態のことをいいます。

    たとえば、段ボール、コンテナ、紙袋、ドラム缶、パレットなど、それぞれの種類が荷姿です。この荷姿の基準を作成し、統一することで荷姿に合わせた積載量の基準を設けて過積載を防止します。

    しかし、荷姿だけで重量を正確に判断することは困難なため、荷姿のルール作成とともに重量の計測に関する整備も進めておく必要があります。

4、まとめ

過積載のような積載違反は、道路交通法違反だけではなく、人の生命身体を傷付ければ刑事罰の対象にもなり得ます。そのため、トラックスケールの導入や社内のルール策定など、社内全体における積載の意識向上を心掛けることが大切です。

過積載によるトラブルが発生し、罰則や懲役を科せられるおそれがある場合は、ベリーベスト法律事務所 山形オフィスまでご相談ください。まずは状況をヒアリングし、問題解決に向けて迅速にサポートいたします。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています