無免許運転は初犯でも罰を受ける? 量刑を解説

2024年03月12日
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無免許運転は初犯でも罰を受ける? 量刑を解説

警察庁は、交通事故に直結する悪質・危険な違反を重点的に取り締まっています。

無免許運転も重点対象であり、令和4年中には全国で1万6761件の無免許運転が摘発されました。また令和4年3月には、山形県警に勤務する男性が「無免許運転」をしていたことが発覚し、大きな話題になりました。

本コラムでは、意外に知られていない「無免許運転」の正しい意味や罰則、初犯で科せられる可能性が高い量刑の程度や穏便な解決策について、ベリーベスト法律事務所 山形オフィスの弁護士が解説します。


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1、「無免許運転」とは? 不携帯や有効期限切れとの違い

「無免許運転」は、意外にもその内容を勘違いしている人が多い違反です。まずは無免許運転の正しい意味を確認しておきましょう。

  1. (1)無免許運転の意味

    無免許運転とは、道路交通法第64条に定められている違反です。同条1項によると、公安委員会の運転免許を受けないで自動車や原動機付自転車を運転する行為を無免許運転と呼びます

    自動車・原動機付自転車を運転する場合は、公安委員会が交付する運転免許を受けなければなりません。運転免許の交付を一度も受けたことがないのに自動車を運転する行為は無免許運転で、通称として「純無免」と呼ばれます。

    また、たとえ運転免許の交付を受けていても、運転免許が無効であれば運転は許されません。
    たとえば、何度も事故・違反を繰り返したため運転免許が取り消された、違反点数が累積して免許停止の処分を受けている最中であるといった状態は、運転免許が無効なので自動車・原動機付自転車を運転すると無免許運転です。

    このような状態を、純無免とは区別して「取り消し無免」や「停止中無免」と呼ぶこともあります。

  2. (2)免許不携帯・有効期限切れとの違い

    無免許運転と紛らわしいのが「免許不携帯」です。道路交通法第95条1項には、運転免許を受けた者について、自動車などを運転する際は免許証を携帯するよう義務付けています。

    無免許運転と免許不携帯は、どちらも「免許をもっていない」という状態です。ただし、有効な運転免許を取得していないことと、単に「現に今手もとにない」ということとでは、まったく意味が異なります。

    免許不携帯は違反点数が加算されない「白切符」で処理される違反で、交通違反の中では軽微な部類にあたるという点も大きな違いでしょう。

    一方で、運転免許の有効期限が切れてしまうと、有効な運転免許がない状態なので無免許運転になります。

    病気で入院していた、海外に長期出張していたなど、運転免許を更新できなかったやむを得ない理由があった場合は、いわゆる「うっかり失効」として再取得の際に一部の試験が免除される制度がありますが、再取得までは運転できません。

  3. (3)平成19(2007)年以降に免許を取得した人は要注意!

    平成19(2007)年6月2日以降に運転免許を取得した人は、自分が受けた運転免許と運転しようとしている車両の車両総重量・最大積載量・乗車定員に注意が必要です。

    たとえば、現行の普通免許では、車両総重量が3.5トン未満、最大積載量が2トン未満、乗車定員10人以下の車両しか運転できません。この定めに従うと、最大積載量2トンのトラックや乗車定員11人のワゴン車は運転できないことになります。

    自分が運転免許を受けていない車両を運転する行為は、いわゆる「免許外運転」であり、無免許運転にあたります。免許外運転は眼鏡などの「条件違反」とは異なり無免許運転として厳しく罰せられることを覚えておきましょう。

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2、無免許運転はどんな罰を受ける? 免許は取り消されるのか?

無免許運転をするとどんな罰を受けるのでしょうか?

  1. (1)刑事上の罰則

    無免許運転には、3年以下の懲役または50万円以下の罰金が科せられます。

    一時停止違反や信号無視などの軽微な違反は反則金を納付すれば刑事処分を受けない「交通反則通告制度」の対象ですが、無免許運転は同制度の対象外です。

    窃盗や暴行・傷害などと同じで、犯罪として捜査の対象になり、刑事処分を受けることになります。

  2. (2)無免許が発覚すれば運転免許は取り消される

    無免許運転が発覚すると、刑罰とは別に行政処分が下されます。

    無免許運転の違反点数は25点なので、過去に一度も行政処分を受けたことがなくても一発で運転免許が取り消され、さらに2年間は再取得ができません。過去に取り消し・停止の行政処分を受けた経歴が2回あれば3年間、3回以上では4年間の欠格期間が設けられています。

    たとえ刑罰が軽く済まされたとしても、運転が必要なドライバーや営業職などであれば仕事ができなくなるかもしれません。そういった意味では、刑罰よりも行政処分のほうが重く感じる方も少なくないでしょう。

3、「初犯」なら罰金で済まされる可能性が高い

無免許運転には厳しい刑罰が設けられていますが「初犯」でもやはり重大なペナルティーは避けられないのでしょうか?

  1. (1)初犯とは?

    ここで「初犯」の意味を確認しておきましょう。

    初犯とは、一般的には「これまでに罪を犯したことがない」という意味だと理解されていることが多いでしょう。

    しかし、法的な意味では、初犯であるか、そうでないかについては。「同種の犯罪について、過去に懲役や禁固、罰金等の刑事処分を受けたことがあるか、ないか」で判断します。刑事処分の重さに大きな影響を与えるのは、法的な意味で「初犯」といえるかどうかがポイントになるでしょう。

  2. (2)初犯の場合の量刑

    無免許運転の罰則は3年以下の懲役または50万円以下の罰金で、裁判官の判断によって懲役か罰金のいずれかが科せられます。

    当然、悪質な違反に対しては厳しい選択が下されますが、法的な意味での初犯であれば、懲役ではなく罰金が科せられる可能性が高いでしょう。

    もっとも、法的な意味で初犯だからといって、必ず刑罰が軽くなるとはいえません。

    たとえば、以前も無免許運転を犯して罰金が科せられたことがあるのに無免許運転を繰り返していた、警察に無免許運転がバレたのは初めてだが長期にわたって無免許で車を運転していたといった状況があれば、悪質であるとして、懲役が選択される可能性もあります。

4、無免許運転で逮捕されるとどうなる? 刑事手続の流れ

無免許運転が発覚して警察に逮捕されると、その後はどうなるのでしょうか?

  1. (1)正式な刑事手続の流れ

    警察に逮捕されると、次のような流れで刑事手続が進みます。

    1. ① 逮捕による身柄拘束
      警察の段階で48時間以内、検察官の段階で24時間以内、合計で最長72時間にわたる身柄拘束を受けます。この期間は、自由な行動や外部との連絡だけでなく、たとえ家族とでも面会さえ許されません。もっとも、弁護士との面会は、この限りではございません。
    2. ② 勾留による身柄拘束
      検察官からの請求によって裁判官が勾留を許可すると最長10日間の身柄拘束を受けます。さらに、捜査の進捗状況によっては一度に限り10日間以内の延長も可能です。つまり、勾留期間は最長で20日間となります。なお、勾留が決定した段階からは接見禁止が付されない限り面会が可能です。
    3. ③ 起訴・不起訴の判断
      勾留が満期を迎える日までに、検察官が起訴・不起訴を判断します。起訴されると刑事裁判の被告人としてさらに勾留され、基本的に保釈が認められない限り刑事裁判が終了するまで釈放されません。反対に不起訴となった場合は刑事裁判が開かれないので身柄拘束の必要もなくなり、即日で釈放されます。
    4. ④ 刑事裁判
      起訴からおよそ1か月後に公開の刑事裁判が開かれます。刑事裁判は一度では終わらず、おおむね1か月に一度のペースで開かれながら、数回の審理を経て判決が言い渡されるのが一般的です。特に争いがなくても2~3か月、争う部分があればそれ以上の期間がかかると考えてください。
  2. (2)無免許運転は「略式手続」が選択される可能性も高い

    無免許運転を含め、交通違反や交通事故といった事件では「略式手続」が選択される可能性が高いでしょう。

    略式手続とは、正式な公開裁判ではなく、書面審査のみの非公開で裁判を終了する手続です。
    100万円以下の罰金の言い渡しを予定している事件で、罪の疑いをかけられている人が略式手続に了承している場合に限って認められています。

    公開の裁判が開かれず、判決に代わる命令が迅速に下されるうえに、必ず罰金の言い渡しを受けるので刑務所に収容されずに済むという点では、利点が大きいといえるでしょう。
    ただし、書面審査のみで必ず有罪となり罰金の支払い命令が下されるので、無罪を争いたい事情がある場合や、罰金の額が大き過ぎるので減額を主張したいといった場合には不向きです。

5、無免許運転で摘発されたら弁護士に相談を

無免許運転が発覚して警察に摘発されてしまった場合は、ただちに弁護士に相談してサポートを求めましょう。

  1. (1)逮捕・勾留からの早期釈放が期待できる

    警察に逮捕され、その後に勾留まで受けてしまうと、最長で23日間にわたって身柄を拘束され、社会生活から完全に隔離されてしまいます。家庭・仕事・学校などへの影響を最小限に抑えるためには、逮捕・勾留による身柄拘束からの早期釈放を実現しなくてはなりません。

    弁護士のサポートがあれば、逮捕・勾留からの早期釈放が期待できます

    無免許運転の疑いをかけられている事件では、無免許運転を勧めたり、車両を提供したりといった他者の介在がない限り、すでに警察側が立証に必要な証拠のすべてを確保していると考えられます。

    弁護士を通じて家族による監督強化の誓約などを主張し、逃亡しないことが確約できれば、警察の段階で釈放される可能性は高まります。
    また、勾留されそうな状況でも、客観的な証拠を添えて逃亡や証拠隠滅を図るおそれがないことを主張すれば、検察官が勾留請求を見送ったり、裁判官が勾留請求を却下したりといった展開が期待できます。

  2. (2)過度に厳しい処分の回避が期待できる

    無免許運転は、反則金を納付すれば刑事処分を回避できる軽微な交通違反とは異なり、懲役や罰金といった刑罰が科せられる犯罪行為です。

    とはいえ、必ず厳しい刑罰が科せられるわけではありません。初犯であり深く反省して二度と無免許運転をしないことを誓っていたり、車両の最大積載量や総重量などによる区分を誤っていたなどの悪意がないケースであったりすれば、罰金が選択される可能性も高いでしょう。

    過度に厳しい刑事処分を避けるためには、深い反省や具体的な再犯防止対策を示す必要があります。どのような証拠を集めて示せば有利な処分を得られるのかを個人で判断するのは難しいので、交通事件の知見をもつ弁護士のサポートは欠かせません

6、まとめ

無免許運転には厳しい罰則が設けられており、悪質なケースでは懲役を言い渡されて刑務所に収容されてしまう危険もあります。

ただし、初犯であり悪質性も低い場合は罰金が選択される可能性も高いので、無免許運転が発覚してしまったらまずは弁護士への相談を急いでください。

無免許運転で摘発されてしまい、身柄拘束からの早期釈放や厳しい刑事処分の回避・軽減を望むなら、交通事件の知見をもつ弁護士のサポートが必須です。無免許運転に関するトラブルの解決は、交通事件の解決実績のあるベリーベスト法律事務所 山形オフィスにおまかせください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています