強盗罪と暴行罪の関係性|その他類似の罪や弁護士に相談すべき理由

2025年04月16日
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強盗罪と暴行罪の関係性|その他類似の罪や弁護士に相談すべき理由

令和6年10月、山形県内でコンビニ店員を脅し現金を奪う強盗事件が発生しています。この事件で県内に住む会社員の男性が強盗の疑いで逮捕されています。

強盗罪は非常に重い犯罪です。前述の事件で犯人は店員に刃物を突き付け「お金を出してください」と頼んでおり、被害者に怪我をさせてはいません。しかし、相手に暴力を振るい怪我をさせて金品を奪い取った場合には、さらに罪が重くなる可能性があります。

この記事では、強盗罪と暴行の関係や、暴行の判断基準、強盗事件ではどのような刑罰が下されるかなどについて、ベリーベスト法律事務所 山形オフィスの弁護士が詳しく解説していきます。


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1、強盗罪と暴行の関係性

そもそも、強盗罪とはどのような犯罪なのでしょうか。泥棒(窃盗)をしようとして暴力を振るった場合には強盗罪になってしまうのでしょうか。
ここでは、強盗罪の成立要件や、強盗罪と暴行の関係などについて、解説していきます。

  1. (1)強盗罪が成立するための条件

    強盗罪が成立するための条件(成立要件)はどのようなものなのでしょうか。
    刑法には、強盗罪について次のように規定しています。

    (強盗)
    第236条 暴行又は脅迫を用いて他人の財物を強取した者は、強盗の罪とし、5年以上の有期懲役に処する。
    2 前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。


    強盗罪は、財産犯という種類の犯罪で、窃盗罪の次に規定されていますが、窃盗罪のように被害者の意思を無視して物を盗むのではなく、被害者の意思を抑圧する点に特徴があります。強盗罪は、「暴行・脅迫によって、相手方の反抗を抑圧して財産を奪い取る」ことで成立する犯罪です。

    そのため、他人の住居や店に押し入り、そこにいた人に暴行や脅迫を加え、その人が反抗できないようにした状態で、財産を奪うと強盗罪に問われることになります。

  2. (2)強盗罪と暴行の関係性

    強盗罪が成立するためには、「暴行・脅迫により被害者の反抗を抑圧する」→「金品や財産を奪取」という一連の流れが必要となります。そのため、財物を手に入れた後で被害者を殴ったとしても強盗罪は成立しません。この場合には、「事後強盗罪」という罪に該当するかどうかが問題となります。詳しくは2章はの(2)で解説します。

    強盗罪が成立するためには、被害者の「反抗を抑圧する程度」の暴行または脅迫があることが条件になります。被害者に暴力を振るったとしても、それが相手方の反抗を抑圧する程度に至っていなかった場合には、強盗罪は成立しません。反抗を抑圧しない程度の暴行をした場合、恐喝罪が成立する可能性は残りますが、より刑罰が重い強盗罪は成立しないのです。

    そして、暴行の程度を判断する基準については、被害者の主観のみならず、行為の状況やその程度、加害者側・被害者側の事情など客観的な事情を考慮して総合的に判断されることになります。そのため、強度の加害を行っていれば、たまたま被害者が屈強な人物で実際には反抗を抑圧されなかったとしても、強盗罪が成立する可能性はあります。

  3. (3)強盗罪には非常に重い刑罰が科される

    強盗罪には非常に重い刑罰が科されています。強盗罪に問われた場合には、「5年以上の有期懲役」が言い渡されます。有期懲役とは、原則として1か月以上20年以下の期間、刑務所に収容され刑務作業を強いられる刑罰のことです。ただし、再犯や併合罪などの加重事由がある場合は、最長30年まで加重されることがあります。
    また、強盗致傷罪では無期懲役または6年以上の有期懲役、強盗致死罪や強盗・不同意性交等致死罪では死刑または無期懲役が科されることがあります。詳しくは2章はの(2)で解説します。

    強盗罪の刑罰は、窃盗罪や恐喝罪など他の財産犯に比べて非常に重く、初犯であっても執行猶予がつかず実刑になる可能性が高い犯罪です

2、強盗罪における暴行の基準|その他の類似犯罪

強盗罪における暴行と他の暴行事件の、「暴行の基準」は同じなのでしょうか。また、強盗を行った場合には、他の類似犯罪が成立する可能性もあります。
ここでは、強盗罪における暴行の基準や、その他の類似犯罪について詳しく解説していきます。

  1. (1)強盗罪と他の暴行事件の基準

    強盗罪における暴行の基準と、他の暴行事件における暴行の基準には違いがあります。刑法における暴行の概念には次のように4段階の基準があります。

    暴行の分類 内容 該当する犯罪
    最広義の暴行 人や物に対して、物理的な力を加える行為 騒乱罪(刑法第106条)
    広義の暴行 直接的・間接的を問わず、物理的な力を用いて相手に影響を与える行為(人の身体以外に向けられた暴力も含む) 公務執行妨害(同95条)
    狭義の暴行 直接相手の身体に対して物理的な力を加える行為 暴行罪(同208条)、傷害罪(同204条)、恐喝(同249条)
    最狭義の暴行 人に対する、人の意思/反抗を抑圧するに足りるほどの物理的な力を加える行為 強盗罪(同236条)、事後強盗(同238条)等


    上記のように、一般的な暴行事件では、「被害者が反抗を抑圧するに足りる」程度かどうかは、条件になっておらず、軽度の暴行でも成立することがあります。
    これに対して、強盗罪に該当する暴行には、相手の反抗を抑圧するに足りる程度の暴行であることが必要です。

  2. (2)強盗罪に関連する犯罪

    強盗罪には、以下のように関連する犯罪があります。強盗事件に関与した場合には、これらの犯罪に問われる可能性もあるため、注意が必要です。

    • 強盗予備罪
      強盗を行う目的でその予備行為をした場合には、強盗予備罪に問われる可能性があります(刑法第237条)。強盗予備とは強盗の準備をすることで、凶器や侵入のための道具を揃えたり、盗みに入る家や店の下見や犯行計画を立てたりすることです。

    • 事後強盗罪 窃盗の犯人が「財物の取り返しを防ぐ目的」や「逮捕を免れる目的」、「証拠を隠滅する目的」で暴行・脅迫を行った場合には、事後強盗罪に問われることになります(刑法第238条)。
      万引きしているところを店員に発見され、逃げるために暴行を加えるといったケースに適用されます。
      事後強盗罪が成立した場合には、強盗罪と同じく「5年以上の有期懲役」が科されます。/li>
    • 昏睡強盗罪 被害者を昏睡(こんすい)させて財物を盗取した場合には昏睡強盗罪に問われることになります(刑法第239条)。昏睡とは、意識が奪われ、抵抗できない状態のことです。薬物などによって引き起こされることが多く、昏睡させて財物を奪う行為は、被害者の生命や身体に重大な危険を及ぼす可能性があるため、重い犯罪として扱われます。
      昏睡強盗罪が成立した場合には、強盗罪と同じく「5年以上の有期懲役」が科されます。

    • 強盗致死傷罪
      強盗が、被害者を負傷させた場合には、強盗致死傷罪に問われることになり、「無期」または「6年以上の懲役」が科されることになります(刑法第240条)。また、被害者を死亡させたときは強盗致死傷罪に問われることになり、「死刑」または「無期懲役」が科されます。
      強盗致死傷罪は、犯人が被害者を怪我させる意図や死亡させる意図があったかどうかに関係なく、強盗の最中にそのような結果が生じれば成立する点が特徴です。

    • 強盗・不同意性交等罪
      強盗犯が不同意性交等を行った場合や、不同意性交等犯が強盗を行った場合には、強盗・不同意性交等罪に問われることになります(刑法第241条1項)。この場合、「無期懲役」または「7年以上の懲役」が科されることになります。
      これら行為により被害者を死亡させた場合には、強盗・不同意性交等罪として、「死刑」または「無期懲役」が科されることになります(同条3項)。

3、強盗罪で逮捕された後の流れ

強盗罪で逮捕された場合には、どのような流れで手続きが進んでいくことになるのでしょうか。ここでは、逮捕されてから裁判までの一連の流れを解説していきます。

  1. (1)警察による取り調べ

    強盗事件を起こした場合、警察に逮捕される可能性が非常に高いといえます。強盗罪の刑罰は非常に重く、被疑者が逃亡または証拠隠滅を図るリスクがあるため、逮捕する必要性があると判断されることが多いのです。
    警察に逮捕された場合には、48時間以内に捜査が行われ、事件を検察官に送致するか否かの判断がなされます。

  2. (2)検察に送致

    被疑者の身柄と事件記録を受け取った検察官は24時間以内、かつ逮捕から72時間以内に、被疑者を勾留するか否かを判断します。
    被疑者の勾留が必要と判断した場合、検察官は裁判所に勾留を請求することになります。

  3. (3)勾留

    裁判官による勾留質問を行ったうえ被疑者の勾留が決定された場合には、原則として10日間の身体拘束が続くことになります。捜査のために追加で勾留する必要がある場合には、さらに10日間を上限として勾留が延長される可能性があります。

  4. (4)起訴または不起訴の決定

    検察官は、被疑者の勾留期間中に捜査を進めて、起訴または不起訴の判断を行います。
    起訴された場合には、被疑者勾留から被告人勾留へ移行し、引き続き身体が拘束されることになります。

  5. (5)起訴された場合は裁判

    起訴された場合には、刑事裁判にかけられます。刑事裁判では、主張や証拠が審理され、最終的には裁判官が言い渡す判決によって被告人の処遇が決定されます。

4、強盗で逮捕された場合は弁護士に相談を

強盗事件では、被害者が怪我を負っていることも少なくないため、刑罰が非常に重くなる可能性があります。被害者の処罰感情が強くなることが予想されるため、被害者と示談したり検察官の不起訴処分を獲得したりするのは難しいことが多いでしょう。強盗事件を起こして逮捕された場合には、重い刑罰が科される可能性を軽減するためにも、すぐに弁護士へ相談することが大切になります。

  1. (1)取り調べなどの弁護サポートを受けることができる

    弁護士に相談することで、取り調べに対する対応方法などについて適切なアドバイスを受けることができます。強盗事件などの重大犯罪の場合には、連日捜査機関による厳しい追及が行われる可能性が高く、被疑者がしていないことまで調書に記載されてしまうリスクがあります。逮捕直後にこのような不利な自白調書が残された場合、事後的に撤回することが難しくなるケースもあります。

    そのため、早期に弁護士と接見して弁護方針を協議したうえで、取り調べには適切に対応していくことが重要となります。

  2. (2)示談や不起訴、執行猶予にできる可能性が高まる

    弁護士に刑事弁護を依頼し、減刑のための適切な対応をすることで、不起訴や執行猶予にできる可能性が高まります。
    被疑者・被告人の罪をできるだけ軽くするには、被害者へ誠意をもって謝罪し、示談を成立させることが重要です。加害者側が被害者側へ直接連絡を取り示談の交渉をすることは難しいため、弁護士が代理人となり交渉を進めることになります。

    事件の被害者との示談が成立することで、加害者が謝罪し被害の弁償が完了したことになるため、加害者側に有利な事情として捜査機関や裁判所に考慮されます。

    仮に、起訴された場合であっても、被害者との示談が成立し、犯行も悪質とはいえない場合には、執行猶予付きの有罪判決が出される可能性が高まります。執行猶予が付された場合には、刑の執行が猶予され、社会生活の中での更生が可能となります。

    いずれにしても、逮捕直後から弁護活動に動いてもらう必要があるため、逮捕されたらすぐに弁護士に相談・依頼することが重要となります

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5、まとめ

強盗罪における暴行・脅迫の程度とは、被害者の反抗を抑圧する程度のものであるため、声や凶器による威嚇であっても該当する可能性があります。
そして、強盗罪の刑罰は他の財産犯と比較して非常に重たい罪となっています。被害者が怪我を負った場合には、無期懲役が求刑される可能性もあります。

そのため、強盗事件を起こして逮捕された場合には、すぐに弁護士に相談することが重要です。刑事事件の経験豊富な弁護士に依頼することで、示談や不起訴、執行猶予の獲得に向けた弁護活動を行ってもらうことができます。

ご家族が強盗罪などの疑いで逮捕された場合には、ベリーベスト法律事務所 山形オフィスに、すぐにご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています