交通事故で使われる任意保険とは|提示される金額と基本の補償内容
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令和5年に山形県内で発生した交通事故は2780件で、死者数は34名でした。
交通事故(自動車事故)の被害に遭った場合は、加害者が加入している任意保険から補償を受けられるため、速やかに任意保険会社へ連絡しましょう。また、被害者自身が加入している任意保険があれば、レッカーサービスや弁護士費用特約などを利用できることがあります。
本記事では、交通事故に適用される任意保険の補償内容などを、ベリーベスト法律事務所 山形オフィスの弁護士が解説します。


1、交通事故に適用される任意保険とは
「任意保険」とは、自動車の運転者が任意で加入する自動車保険です。法律で加入が義務付けられているものではありませんが、自賠責保険では補いきれない損害をカバーする重要な保険です。
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(1)任意保険と自賠責保険の違い
自動車保険は、強制加入の「自賠責保険」と、任意加入の「任意保険」の2種類に大別されます。
自賠責保険(自動車損害賠償責任保険)は、自動車に乗る際に加入が義務付けられている保険です。交通事故の被害者に対しては、自賠責保険から最低限の補償が行われます。
ただし、自賠責保険によって補償されるのは人身損害のみで、物的損害(物損)は補償されません。また、人身損害についても補償限度額が設けられており、損害全額が補償されるわけではありません。
これに対して任意保険は、自動車の運転者が任意で加入する自動車保険です。自賠責保険ではカバーされない交通事故被害者の損害も、加害者が任意保険に加入していれば、任意保険の保険金によってカバーされます。 -
(2)補償内容は加害者側の任意保険による
交通事故の被害者に対しては、原則として加害者側の任意保険から補償が行われます。
被害者自身が加入している任意保険から補償がなされるわけではなく、被害者側が支払う保険料が高くなってしまうこともありません。
ただし、交通事故被害者の立場であっても、自分が加入している任意保険のサービスを利用できることがあります。利用できるサービスの内容を確認するため、交通事故の被害に遭ったら、自分が加入している任意保険の保険会社へ連絡しましょう。
2、被害者でも自分の任意保険会社に連絡すべき理由
交通事故の被害者が、加害者側だけでなく自分が加入している任意保険の損害保険会社にも連絡した方がよいのは、次の理由によります。
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(1)レッカーサービスを利用できることがある
任意保険には、交通事故に遭った際のレッカーサービスが付けられていることがあります。
レッカーサービスを利用すると、交通事故によって自力走行不能となった自動車を、最寄りの修理工場などまで無料でレッカー移動してもらえます。 -
(2)示談交渉代行サービスを利用できることがある
任意保険には、示談交渉代行サービスが付けられているのが一般的です。
示談交渉代行サービスを利用すると、交通事故の相手方との示談交渉を保険会社に代行してもらえます。自力で示談交渉をする場合に比べて、労力やストレスが軽減されるのが大きなメリットです。
ただし、任意保険の示談交渉代行サービスを利用できるのは、原則として、被害者側にも何らかの過失がある場合に限られます。
また、任意保険会社に示談交渉を任せていると、加害者側から十分な額の損害賠償を引き出してもらえないおそれがあります。示談交渉代行サービスが利用できる場合でも、あえて利用せずに弁護士へ相談することも検討しましょう。 -
(3)オプションによって補償を受けられることがある
過失相殺によって保険金額が減らされた、加害者側が任意保険に加入していなかったなどの理由で、加害者側から十分な損害賠償を受けられないケースがあります。
このような場合には、被害者自身が加入している任意保険のオプションを利用して補償が受けられないかどうか確認しましょう。
具体的には、以下のようなオプションによって補償を受けられることがあります。任意保険のオプション 人身傷害保険 契約者(被保険者)や同乗者が交通事故でけがをし、または死亡した場合に、過失割合にかかわらず実損害が限度額まで補償されます。 搭乗者傷害保険 契約者や同乗者が交通事故でけがをし、または死亡した場合に、人身傷害保険に上乗せして一定額の補償がなされます。 車両保険 交通事故によって車両が破損した場合に、修理費などの物的損害が補償されます。 -
(4)弁護士費用特約を使えることがある
任意保険には「弁護士費用特約」が付けられていることがあります。弁護士費用特約を利用すると、300万円程度までの弁護士費用の全部または大部分が保険金によってカバーされます。
費用の心配をすることなく弁護士に依頼できるのが、弁護士費用特約の大きなメリットです。交通事故の被害に遭ったら、自分の任意保険の保険会社に連絡して、弁護士費用特約が利用できるかどうかを確認しましょう。
3、加害者側の任意保険会社の対応と注意点
交通事故によって被害者が受けた損害については、加害者側の任意保険会社から補償を受けることができます。
具体的には、医療機関に対する治療費の支払いや、トータルの損害に対する保険金の支払いを受けられます。
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(1)医療機関に対する治療費の支払い
交通事故によるけがを治療するための費用は、原則として交通事故と因果関係のある実費全額が損害賠償の対象です。加害者が任意保険に加入していれば、任意保険会社が治療費を支払います。
加害者側の任意保険会社に依頼すれば、多くの場合、医療機関等に対して治療費を直接支払ってもらえます。被害者が治療費を立て替える必要がなくなるので、経済的負担や手間が軽減されます。 -
(2)症状固定│支払いの打ち切りに注意
治療が進むと、加害者側の任意保険会社が被害者の症状固定(※)を主張して、治療費の打ち切りを一方的に提案してくることがあります。
※症状固定=治療を継続しても症状改善の見込みがないと判断される状態
加害者側の任意保険会社から治療費の打ち切りを主張されても、受け入れることなく主治医や弁護士に相談しましょう。 -
(3)保険金の支払い|示談交渉等が必要
治療費以外にも、以下のような損害が原則として交通事故による損害賠償の対象となります。
- 通院交通費
- 装具、器具の購入費
- 入院雑費
- 付添費用
- 介護費用
- 休業損害
- 逸失利益
- 入通院慰謝料
- 後遺障害慰謝料
- 死亡慰謝料
- 葬儀費用
- レッカー代
- 車の修理費、買替費用
- 代車費用
- 評価損
- 休車損害
- けがをした動物の治療費
これらの損害については、示談交渉の結果に基づき、加害者側の任意保険会社が被害者に対して保険金を支払います。
示談交渉を始めるべきタイミングは、被害者側の損害がすべて確定した時です。具体的には、後遺症がなければ完治の診断を受けた時、後遺症が負った場合は症状固定の診断を受けた後、後遺障害等級の認定を受けた時が目安となります。
示談交渉において、加害者側の任意保険会社は、被害者の損害額に遠く及ばない保険金額を提示してくるケースがよくあります。不適切な保険金額に対して反論し、適正額の保険金を請求するためには、弁護士のサポートを受ける必要があります。
お問い合わせください。
4、交通事故の治療に専念したいなら、弁護士に相談を
交通事故の損害賠償請求を、自力で行うのは非常に大変です。けがの治療や生活の立て直しに専念したいなら、弁護士に相談することをおすすめします。
弁護士は、交通事故の損害賠償請求に必要な対応を全面的に代行します。弁護士に依頼すれば、損害賠償請求の労力やストレスが大幅に軽減されるでしょう。
また、加害者側の任意保険会社が不適切な保険金額を提示してきても、弁護士に依頼していれば、法的な観点から反論が可能です。適正額の保険金を受け取るためには、弁護士のサポートが大いに役立ちます。交通事故の損害賠償請求は、弁護士にご相談ください。
お問い合わせください。
5、まとめ
交通事故の被害者は、加害者が加入している任意保険から補償を受けることができます。また、被害者自身が加入している任意保険についても、レッカーサービスやオプション補償、弁護士費用特約などを利用できることがあります。保険会社に連絡して、補償内容を確認しましょう。
交通事故による損害を十分にカバーするだけの保険金の支払いを受けたいなら、弁護士のサポートを受けるのが得策です。加入している任意保険に弁護士特約が付いている可能性もあるので、まずは確認してみましょう。
ベリーベスト法律事務所 山形オフィスでは、交通事故の損害賠償請求に関するご相談を随時受け付けております。人身事故・物損事故のいずれについても、実績ある弁護士がサポートいたします。
交通事故に被害に遭ってしまった方は、まずはお早めにベリーベスト法律事務所へご相談ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています
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